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チャレンジハラスメントクイズ!(具体例を毎週更新!)

これはパワハラ・それとも業務指導?〜パワハラの基本を再確認しよう!

ちょっと厄介で、できればスルーしたいハラスメントへの理解。でも、「生き生きとした風通しの良い職場を作り、生産性を上げるためには」避けて通れない課題です。そこで、今回は事例とクイズを中心にハラスメントを再確認、防止への新たな一歩を探ってみたいと思います。

 

パワハラ成立 3つの条件

職場におけるパワハラの成立条件は以下の3つです。下記は「同じ仕事場で働く人、正社員、契約社員、嘱託社員、派遣社員、パート・アルバイト」全ての雇用形態の人に適用されます。

1)優越的な関係を背景にした言動である

2)業務上必要かつ相当な範囲を超えたものである

3)労働者の就業環境が害されるものである

まずは代表的な6つのパワハラを確認

1 身体的な攻撃

暴行や傷害等 逆らえない相手に立場を利用して暴行や傷害行為をする身体的な攻撃です。程度に関わらず、身体的に危ない行為を受けたかどうかが判断基準です。

2 精神的な攻撃

脅迫や名誉毀損、侮辱、ひどい暴言等。人格攻撃を含む過度な叱責も当てはまります。必要以上に叱責される場合もパワハラに該当するので、判断に悩む場合は上司や同僚、友人・知人に相談しましょう。

  • 社員が大勢いる前で怒鳴る 何度も大声で怒鳴る
  • 厳しい叱責を執拗に繰り返して恐怖を与える 大きな声を上げる、恫喝する
  • 業務に関係のないことで人格を否定される
  • 業務に関係のあることでも精神的苦痛を受けるほど激しく叱責される

3 人間関係からの切り離し:隔離や仲間外し、無視など

一人だけ別室に隔離する、仲間外れにする、無視するといった人間関係からの切り離しもパワハラにが該当します。直接的に「辞めろ」と言わなくても、こういった行動から退職につながった場合はパワハラで訴訟されることもあります。

4 過大な要求

業務上明らかに不要なことや遂行不可能無ことの強制、仕事の妨害など。つまり無理難題を押し付けることであり、そして業務上で明らかに不要なことや私的なことを強制するケースも含まれます。

5 過小な要求

業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと

6 個の侵害

私的なことに過度に立ち入ること。業務とは無関係な個人のプライベートに関わることを過度に聞き出すといった行為は、もちろんパワハラに該当します。交際相手のことを執拗に問う、妻といった相手の身内に対する暴言や悪口をいうといった事実があったかどうかも、パワハラかどうか判断する基準です。身体的特徴に関する言及はセクハラやモラハラとして扱われる場合もあります。

 

チャレンジ!パワハラクイズ

それでは早速、クイズにチャレンジしてみましょう!下記のクイズは「答え1〜3」のドレに当たるでしょうか。

 

1 ハラスメントではない 2 どちらとも言えない 3 ハラスメントである  

 

 

クイズ1

昼休みにY医師は部下数名と談笑していました。そのうちの1人、看護師のGさんが生意気なことを言ったので、「30以下の小娘につべこべ言われたくないなあ」と言ってしまいました。

 

 

  それでは答え合わせです!

 

3 ハラスメントである  2  どちらとも言えない  1 ハラスメントではない

 

 

年齢、性別や数名の部下の前での発言に問題を感じます。Y先生とGさんの間に冗談で済ませられる信頼関係が築けていれば、ハラスメントとはいえない場合もあります。ただ、これを第3者がみたり聞いたりした場合は、また事情が異なります。不快感をもって「Y先生はハラスメントをした」と考える人もいるでしょう。

 

 

 

 

クイズ2

O課長は、休憩時間やちょっとした雑談の時に、明るくユーモアのあるインドネシア人スタッフAさんに対し、親しみを込めて「クロちゃん」と呼んでいます。Aさんは、テレビ番組で人気のある同名のお笑いタレントに、風貌がよく似ているからです。Aさんも「クロちゃん」と呼ばれることを特に嫌がってはいないようです。

 

  それでは答え合わせです!

 

3 ハラスメントである 2  どちらとも言えない 1  ハラスメントではない

 

 

O課長とAさんの関係が良好であって、2人の間だけで、この呼称が用いらているなら、ハラスメントとは言えないのかもしれません。ただ、本人が嫌がっていなくても、これを聞く周りのスタッフはどう感じるでしょうか。O課長がいくら親しみを込めてAさんを「くろちゃん」と呼んでも、それを聞いて不愉快に思う人は少なくないはずです。ケースによっては人権問題にもなりかねません。

国籍、民族、人種等に対する差別的言動はこの場合は「クロちゃん」ですが、これはレイシャルハラスメントに当たります。

仕事中はどこまでも、「田中さん」「鈴木さん」のように名前を呼ぶようにしましょう。

 

 

 

 

クイズ3

新人パートのCさんは、休憩室にあるテーブル席に座ってお茶を飲みました。習慣的に、いつも同じ席に座っていたのですが、しばらくするとある数名のスタッフから無視されるようになりました。実は、テーブル席には暗黙のルールがあり、先輩が上座、後輩は下座で、勝手に座ってはいけなかったのです。

 

  それでは答え合わせです!

 

3 ハラスメントである  2  どちらとも言えない  1  ハラスメントではない

様々な場所で、よくある話です。

私の勤める大学でも非常勤講師の部屋では、おおよそ席が決まっています。4月になり、新人の先生が大先輩の非常勤講師の席に座ってしまうと、あとで、そのグループに中堅どころの先生に注意されたりして、気まずいことが起きることもあり、です。最初から席が決まっていれば、一悶着は起きないはずなのですが、、。

「休憩室のテーブルは自由に使える」という前提で考えれば「暗黙のルール」により席を決め、それに従わない人を仲間外れにするのは、ハラスメント(人間関係の切り離し)に該当します。休憩室は誰もが安心してゆっくり休める「場所」として、活用したいですね。気になるようでしたら、職場のリーダーに「席」について相談してみましょう。

 

 

 

最後に パワハラを未然に防ぐには

さて、クイズはいかがでしたか?

ハラスメントか業務指導か、その線引きは、、難しい問題です。行為者と被害者の関係性にもよりますが、2022年4月の中小企業へのハラスメント防止法施行に合わせ、ひとりひとりがきちんとハラスメント防止について理解する努力をしたいものです。

最後に、パワハラが起こらないよう未然に防ぐための対策として考えられるのは、次の5つです。

  • 企業トップからの強いメッセージ
  • ルールの設定
  • 実態の把握
  • 教育の徹底
  • 周知の徹底

ある大企業は社長を除く全社員に対し、ハラスメント防止研修を5年間にわたり実施しました。1年に1回2時間、アルバイト・パート、契約社員、嘱託社員、派遣社員、正社員の全員が受講するのです。5年目には全ての人がハラスメント防止についてのルール、個人の対策、ハラスメントの現場を見た場合の対応が周知されました。たかが2時間の研修でも5年続けると相当な効果がある、とわかりました。

ハラスメントは決してあってはいけないことです。

何が業務指導で、どこからがハラスメントか、しっかりと見極めて仕事をしていきたいものです。

 

 

 

 

 

株式会社キャリア・ストラテジー(キャスト)

・2021年度から陸上自衛隊幕僚監部で将官・1佐など、駐屯地の司令、部隊のリーダーとなる幹部自衛官へのハラスメント防止研修(2021年度より1年に1回の義務教育)を担当。陸上幕僚監部人事教育部ワークライフバランス班とともに陸上自衛隊のハラスメント「0」のために防止研修、対策で試行錯誤を続けている。

・2023年から国内大手食品メーカーで、ハラスメント防止研修を実施。10,000人弱のスタッフを対象に1年に60回の研修を続けている。このメーカーにはたくさんの外国人労働者が在籍することから、さまざまな背景を持つ人たちへのハラスメント防止研修、コミュニケーション研修を続けている。

・現在「ハラスメント防止研修の講師」の養成を年間を通して行っている。マイナスのイメージの強いハラスメント防止研修を「受けて楽しく忘れない」研修に変えるべく、講師育成に力を入れている。

・ハラスメント担当講師:吉本惠子 松本利勝(株式会社キャリア・ストラテジー)